ナオミとルツ
聖研 ルツ記
はじめに
この質問集は、「よき知らせの学び」でも伝道聖研のためでもなく、クリスチャンだけの集まりのためのものです。婦人会など、女性の多い集まりに最適です。5回で終わります。また、場合に合わせてナオミについてだけ、ルツについてだけというふうにもできます。
テーマは、ナオミの苦しみ(1,2,5)とルツの結婚についての神の導き(2,3,4、)の2つです。後者は青年会やキャンプで学ぶことができます。
このテキストは新共同訳聖書を基にしています。別の訳の聖書を使う場合は、司会者はそれなりの対応をしてください。
マイリス・ヤナツイネン
1 ナオミはすべてを失う (1,1−13)
背景
時は士師の時代(BC1380−1080)。物語はベツレヘムという小さな村から始まります。その村が後に大王の故郷になった経緯が、この書でわかります。
エリメレクの4人家族は飢饉のためにモアブというとなりの国に難民として移っていきました。当時イスラエルとモアブの関係が悪かったことには、3つの理由がありました。まず、エジプトから国に帰る途中のイスラエルの民が通ることを、モアブは拒絶しました(士師11,17−18)。次に、モアブの王はイスラエルを呪うようにと預言者に命令しました(民数22)。律法にこう書いてあります。
アンモン人とモアブ人は主の会衆に加わることはできない。十代目になっても、決して主の会衆に加わることはできない。(申命記23、4)
また、モアブの女性たちはイスラエルの男性を性的な罪と偶像礼拝に引きずり込みました。そのため、主の怒りによって24000人ものイスラエル人が死にました(民数25、1−9)。
モアブ人が信仰するのはケモスといって、危機のときには家族を救うために子供を生贄に捧げることを要求する、恐ろしい神でした(列王下3,27)。
イスラエル人とモアブ人は、言葉がほぼ同じでした。
質問
悲劇が次々と
エリメレクの家族はモアブに移ってから、どんな困難に出会いましたか。(仕事、住まい、隣人との関係、宗教など)(1−2節)
外国で夫を亡くしたとき、ナオミの思いはどんなものだったでしょうか。(神との関係、自分や息子たちの将来について)(3節)
母子家庭の母親が思春期の息子を育てるのに、どんな問題がありますか。
嫁と姑の関係は、どんな国でも難しいものですが、どうしてでしょう。(4節)
国籍が違う嫁姑の間に起こりやすい問題は何でしょう。
モアブ人の嫁たちとナオミがとてもうまくいったのは、どちらのおかげだと思いますか。話し合ってください。
二人の息子、マフロンとキルヨンは、ほぼ同じころに死んだという印象を受けます。(5節)そのとき、まだ20歳くらいだった若者が死んだ理由は何だったか、いろいろ考えてください。
息子たちの葬儀のとき、ナオミは神様に何を言ったか、想像してください。
すべてを失ったナオミを支えたのは何でしたか。
嫁たちとナオミの宗教は違いました。ルツとオルパは、この不幸なときのナオミの信仰のどんなところに驚いたでしょうか。
やっと故郷へ
嫁たちと一緒に帰りたかったのに、どうしてナオミは二人を親の元へ返すことにしたのでしょう。いろんな理由を考えてください。(6−9)
この二人が自分の親や友達、そして国も文化をも捨ててまで姑についていこうと思うわけは何でしょう。
11―13節を通して、ナオミは嫁たちに何を言いたかったのでしょう。
嫁たちを残して、年寄り一人だけで国に帰ろうとしたナオミは、その後のことをどう考えていたでしょう。帰り道の困難や故郷での生活のことなどを想像してください。
ナオミは外国で夫も息子も亡くした女性です。1−13のこの個所を通して、彼女の性格と悲しみの受け取り方にどんな印象を受けますか。
ナオミのどんなところに倣いたいですか。
終わりに
モアブ人は、不幸は悪いことをした報いだと考えていましたから、ナオミの隣人たちはその家族を襲った不幸も同じ目で見ていたでしょう。エリメレクの家族は国で、何かひどい罪を犯したに違いないと思ったかもしれません。
オルパとルツは、なにもかも失ったのに見えない神にしがみつくナオミの信仰を見て、驚いたにちがいありません。ナオミが心から神を信じなかったから、こんな目にあったのでしょうか。違います。彼女が口を開くときにはいつも、主の名が出て来ることから明らかです。ナオミはだれの手からその悲しみを受け取ったのかについて、次回で学びます。
2 あなたの神はわたしの神 1,14−22
背景
はじめは二人の嫁と一緒に国に帰ろうと思ったナオミですが、心が責め始め
ます。というのは、イスラエルで待っているのは、貧困とモアブ人に対する差別だ けだと分かっているからです。親元では新しい結婚も幸せも可能ですから、ナオミは二人に別れを言います。
質問
オルパ
姑と別れたとき、オルパは何を失いましたか。(14、15)(彼女と主との関係はそれからどうなったでしょうか)
モアブでのオルパの残りの人生はどうだったか想像してください。
ルツ
ルツはどうしてそんなに深く姑を愛したのでしょう。(15,16)
私たちが家族の中でナオミのような暖かい存在になるには、どうすればいいでしょう。
ルツのイスラエルの神様への信仰が正しいものであったというのは、どういうところからわかりますか。(16,17)
ルツは不幸しか与えない姑の神を見ていました。それなのになぜ、そんな神様を信じたいと思ったのでしょうか。(ケモスには与えられないもので、主が与えることができるものはなんですか)
姑が死んでしまっても、ルツが自分の国に帰ろうと思わなかった理由はなんでしょう。(17前半)
16,17節は、人間同士の愛について何を教えていますか。、またイエス様の愛についてはどうですか。
ナオミ
ナオミは最初は反対したのに、ルツがいっしょに行くことに同意したのはなぜでしょう。
ベツレヘムの人たちに自分の身に起こったことを話したとき、ナオミは神様に対して怒ったかどうか、考えてください。(19−21)
苦しみについて語るとき、ナオミは神を全能者と呼んでいますが、どうしてですか。(20,21)
ナオミは苦しみが神から来たと信じましたが、それは正しかったでしょうか、それともサタンから来たと思うべきだったでしょうか、話し合ってください。(13B、20,21)
8節後半と9節から、ナオミは3つの悲劇の後、神様の愛を信じたかどうかについて話し合ってください。
もし、ナオミが自分の苦しみをサタンの仕業、あるいは運命、偶然の出来事と考えたなら、その後の彼女の人生はどうなっていたでしょうか。
幸せも不幸もすべて全能者である神の御手から受け取るには、どうすればいいでしょう。
終わりに
もし、ナオミについて行かなければ、姑の神様も失ってしまうことを、ルツは知っていました。なぜなら、ナオミは彼女にとって神様と出会う唯一の手段だったからです。ルツが姑の神にあこがれたのは、ナオミの中に神の愛を見たからです。それまでのルツの周辺には、ナオミのように嫁を愛する姑は、たぶん一人もいなかったのでしょう。また、ナオミのように、悲劇の際にも失望しないで神様に頼る人も見たことがなかったにちがいありません。
ですから、ルツはイスラエルでは差別される生活が待っているを分かりながらも、敢えて故郷へ帰るナオミに従ったのです。
3 運命的な出会い 2,1−23
背景
前述のように、モアブ人は十代目まで神の会衆には加わることができませんでした。それでもルツは主が自分のような異邦人をも受け入れてくださるという希望をもっていたかもしれません。
ベツレヘムにたどり着いた二人の貧しい未亡人は、最初の夜、どこで過ごしたでしょうか。翌朝、若いほうの未亡人は生活保護を受けるために出かけました。当時の生活保護についてモーセの律法にこう書いてあります。
穀物を収穫するときには、畑の隅まで切りつくしてはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。ぶどうも摘みつくしてはならない。ぶどう畑に落ちた実を拾い集めてはならない。これらは貧しい者や寄留者のために残しておかねばならない。わたしはあなたたちの神、主である。(レビ記19、9−10)
(注1.ルツ記2章20節の言葉・縁続きの人については、次回で説明します。
注2.時間が足りないときは、質問を飛ばしてもかまいません)
質問
生活保護
モアブ人のルツにとって、落穂を拾いに行くことにどんな困難があったでしょう。(1,22と2、2)
落穂を拾うとき、体のどこに一番負担がかかりますか。
みなさんなら、こんな仕事を何時間続けることができると思いますか。
落穂を拾う人がいじめられたことは、この個所のどこでわかりますか。
ルツはなぜ、水と昼食を用意しなかったのでしょうか。(9、14)
ボアズ
1,4,5節で、ボアズからどんな印象を受けますか。
みなさんは一目惚れに本当の愛の可能性もあると信じますか。理由もあげてください。
ボアズはルツのどういうところにひかれたと思いますか。(5−7、参照11−12)
嫁が姑のために将来を捧げるということは、その嫁について何がわかりますか。
ボアズはルツがモアブ人であること、未亡人であることに違和感がなかったように見えます。それはどうしてでしょうか。いろんな理由を考えてください。
現代のクリスチャンの若者は女性のどういうところにひかれますか。
どうしてボアズは、ルツをほかの人の畑に行かせなかったのでしょう。(8,9)
ルツがイスラエに来たのは、その神の御翼のもとに逃れるためだったことを、どうしてボアズは知っていたのでしょう。(11,12)
ボアズにとって、ルツが自分と同じ信仰を持っていたというのは、どういうことを意味しますか。
ボアズと初めて出会ったルツは、彼にどんな気持ちをいだいたでしょう。(10,13)
どういう理由で、ボアズは14節から16節のように振舞ったのでしょう。
ナオミ
ルツに聞いた話は、ナオミの信仰にどんな影響を与えたでしょう。(17―20)
主は死んだ人にもいつくしみを惜しまれない、というナオミの言葉はどんな意味ですか。(20)
神の導き
この2章からみなさんは、神の導きについてどう学びましたか。
みなさんの人生で、結婚に関しての神様の導きがある(あった)ことを信じていますか。よければ理由も言ってください。
神の子にはいつも一番いい人生が与えられるかどうかについて、話し合ってください。(それとも、2番目、3番目しか与えられないクリスチャンがいると思いますか)
終わりに
ナオミはルツの言葉を聞いて、神の愛を10年ぶりに実感しました。飢饉のとき以来、神様は自分を憎んでおられるかのようにしか思えない出来事ばかり続きました。それなのに、見ないで信じ続けたナオミは、ルツをボアズの畑へ導いてくださった神さまの愛を今、確信できました。
イエス様はボアズが言った翼の言い方を引用されました。
エルサレム、エルサレム・・・めんどりが雛を羽の下に集めるように、わたしはおまえの子らを何度集めようとしたのか。だが、おまえたちは応じようとしなかった。(マタイ23、37)
めんどりが雛を自分の体で守るように、イエス様は私たちをご自分の体を犠牲に して救ってくださいました。私たちの人生で最高の導きは、その翼のしたに身を置くことです。
4 縁続きの人 3、1−18
背景
ボアズはナオミとルツにとって縁続きの人でした。縁続きの人には2つの責任がありました。ひとつは、だれか親戚が土地を失ってしまったときには、その土地を買い戻さなければならない、もうひとつは、親戚の家が絶えそうになったときには残された女性のひとりと結婚して、跡取りをつくること。縁続きの人と贖い主という言葉はヘブライ語ではほぼ同じです。縁続きという名詞、動詞はルツ記に20回出てきます。
麦の刈り取りは4月から5月の2ヵ月で、ルツはその間毎日落穂拾いに畑へ行きました。ベツレヘムの人々は、この娘が評判のように素行の悪いモアブ人であるがどうか観察していました。当時、脱穀の日には祭りがあって、その夜は持ち主が泥棒を見張るために、麦の山の傍で眠りました。
質問
ナオミの計画
ボアズはルツを愛するようになったのに、どうしてすぐにプロポーズしなかったのでしょう。
ナオミはボアズに結婚のことを言わないで、いきなりルツを彼のところにいかせました。なぜだとおもいますか。(1−4)
みなさんなら、自分の娘にこういうことをさせられますか。理由も言ってください。
ナオミがボアズをそれほど信頼したわけは何でしょうか。
もしこのときに性的な関係を結べば、その後ボアズ、ルツそれぞれに、どんな影響を及ぼしたと思いますか。
ボアズとルツ
ルツはボアズの衣の裾にくるまって、ぐっすり眠ることができたでしょうか。
「どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください」と言うことで、ルツはボアズに何を願ったのでしょう。(9)
女性の方からプロポーズすることを、みなさんはどう思いますか。
ルツが男を追いかけなかったことと、ベツレヘム人の間で評判がいいことは、ボアズにとってどういう意味を持っていましたか。(10と11)
現代の男性にとって、さきほどの2点が大切かどうかについて話し合ってください。
マタイ1章5節から、ボアズの母か祖母がエリコの遊女・ラハブだったことがわかります。このことはボアズの人生や異性関係などにどんな影響を与えたでしょうか。
ルツが12、13節のボアズの言葉に対して何も答えなかったのはなぜだと思いますか。
ボアズがその夜、ルツに触れなかったことを、彼女はどう受け取りましたか。その時と、そののちのことを考えてください。
同じ衣の中で夜を過ごした間の、ふたりの心の中を想像してください。(14)
ボアズがもう一人の縁続きの人にチャンスを与えたのはどうしてですか。
六杯の大麦で、ボアズはナオミに何を言いたかったのでしょう。(15)
贖い主
ボアズはどんな点で贖い主としてのイエス様の雛形になりますか。(2,12と3,9)
終わりに
イエス様はボアズがルツを買い取ったと同じように、私たちを贖ってくださいました。その代価はイエス様の尊い血潮でした。あなたを罪と死とサタンから贖っててくださったイエス様は、今あなたにこう言われます。「恐れるな、わたしはあなたを贖う。あなたはわたしのものだ。わたしはあなたの名を呼ぶ」(イザヤ43,2)
5 ナオミ・イエス様の先祖 4,1−22
背景
学び4の背景の縁続きについての箇所を見てください。
質問
町の門で
ボアズが結婚のことではなく、畑について話し始めたのはなぜでしょう。(1−4)
もう一人の縁続きの人が畑を買い戻すと聞いたとき、ボアズはどう思ったでしょう。
もう一人の親戚の気が変わったのはどうしてですか。(5−8)
ボアズはルツと結婚するために、何を捨てましたか。(9と10)
ベツレヘムの人々は、ボアズがモアブの娘と結婚したことをどう思ったでしょう。(11と12)
(ベツレヘムの人々が、ルツをラケルとレア、タマルのようなイスラエルの歴史的に重要な女性に重ね合わせて考えたのはどういう意味ですか。)
司会者はマタイ1、3−5を読んでください。ベツレヘムの人々のお祝いの言葉がどう実現したか、考えてください。(11と12)
オベドちゃん
ルツの2回の結婚と夫との関係の違いについて話し合ってください。(13)
ベツレヘムの女たちの言葉の中で、特に興味深いところをあげてください。(14と15)
ナオミにとって二人の息子を育てるのと、オベドちゃんの世話をするのに、どんな違いがあったでしょう。(16と17)
ナオミの残りの人生を想像してください。夫と息子たちを亡くした悲しみを最後まで持ち続けたと思いますか。理由も言ってください。
オベドからダビデまで何年ぐらい経っているか考えてください。ダビデは8人兄弟の末っ子ですが、ひいばあちゃんのルツと会えたでしょうか。(18−22)
苦しみの意味
ルツ記の最後を見て、主はなぜ、ナオミに3つの苦しみ(家、夫、二人の息子を失う)を与えられたのか考えてください。
ナオミは自分の苦しみの意味がいつ分かりましたか。
私たちクリスチャンは、生きている間に自分の苦しみの意味がわかるかどうかについて話し合ってください。
イエス様の系図に一人の異邦人が加わることが、なぜ必要であったのか、その理由を考えてください。
みなさんが、ルツ記から教えられた一番大きなことは何ですか。
終わりに
ナオミの苦しみには大きな意味がありました。モアブ人の娘をイスラエルに連れてきて、イエス様の系図に外国人を混ぜることでした。そのことは彼女が生きている間には分かりませんでした。でも、ナオミは何か意味があるということを信じていたにちがいありません。つまり、全能者である天の父は、自分の子供に意味のない苦しみはお与えにならないからです。これをみなさんも信じてください。
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